「PCを買い替えたらレンダリングは何倍速くなるのか」——これはよく聞かれますが、他人のベンチマーク結果はあまり参考になりません。
After Effectsの処理時間は、プロジェクトの中身で大きく変わるためです。
同じPCでも、パーティクルを多用したコンポと、テキストを動かすだけのコンポでは、ボトルネックになる場所がまったく違います。
だから、自分のプロジェクトで測るのが一番確実です。
この記事では、正しい測り方と、どこが足を引っ張っているかを切り分ける手順をまとめます。
同じ条件を3回測り、中央値で比べる
練習用にプロジェクトを別名保存し、同じ3秒の範囲、解像度、fps、出力形式、保存先を固定します。
使用したAE版とプラグインも記録します。
練習ZIPのtrial-log.csvに条件A・Bを各3回書けます。
繰り返し処理を測るなら、条件A・Bで同じ準備のプレビューをしてから各3回測ります。
初回処理を測るならキャッシュを消した測定を別の組として記録し、前者と混ぜません。
出力フォルダーは試行ごとに分けます。
計算の例として、条件Aが12・10・11秒なら中央値は11秒、条件Bが9・8・10秒なら9秒です。
短縮率は(11−9)÷11×100で約18.2%です。
これは計算用の架空値で、AEで実測した改善率ではありません。
PNGとWAVを分けて出す手順なら、最終MP4へのエンコードも含む合計時間を別に測ります。
レンダーキューの時間だけと、受け渡しを含む全体の時間を比較しないようにします。
結果が揃わないときは処理範囲、キャッシュ状態、常駐アプリ、出力先の競合を先に見直します。
作業後は変更した設定と出力先を戻し、元のプロジェクトを開きます。
消去したキャッシュは元に戻すのではなく再生成されます。
キャッシュの仕様とMFRの説明を2026年10月3日に照合しました。
AE実測は未実施です。
| 確認すること | 期待する結果 | 違ったとき |
|---|---|---|
| 条件 | 同じ範囲・fps・形式・キャッシュ状態 | 変えた項目が複数ないか確認 |
| 結果 | 各3回の秒数と中央値を記録 | 差がぶれるなら他の負荷を確認 |
| 戻し方 | 元の設定とプロジェクトに戻る | 消去したキャッシュは再生成を待つ |
なぜ他サイトのベンチマークが当てにならないのか
- テストに使うプロジェクトが違う。
3D主体か合成主体かで、効くパーツが変わります - プラグインの構成が違う。
マルチフレームレンダリング非対応のプラグインが1つ入るだけで、結果は変わります - キャッシュの状態が書かれていない。
キャッシュが残った状態で測れば、当然速い数字が出ます - 素材の置き場所が違う。
外付けドライブか内蔵かで読み込み速度が変わります
参考にするなら「傾向」までにとどめて、判断は自分の環境で測った数字で行ってください。
正しい測り方:4つのルール
① 冷えた状態とキャッシュがある状態を分けて測る
比較する2条件で、キャッシュの扱いをそろえることが大切です。初回処理を調べる測定と、繰り返し作業を調べる測定は別に記録します。
2回目以降が速くなる場合は、キャッシュを使う実際の作業を測っている可能性があります。毎回消す方法だけでなく、同じ準備をした状態同士でも比較します。
冷えた状態を調べるときだけ、「編集」→「キャッシュの消去」の対象を確認してから測ります。消したキャッシュは再計算されるため、次のプレビューが遅くなることがあります。
Adobeの現行資料はWindows・macOSともキャッシュの消去をEdit(編集)→Purgeとして説明しています。環境設定のメニューとは区別します。
② 変える条件は1つだけにする
メモリを増設したなら、それ以外は変えないでください。
同時に解像度も変えると、どちらが効いたのか分からなくなります。
③ 3回測って中央の値を採る
1回だけでは、バックグラウンドの処理に引っ張られることがあります。
3回測って真ん中の値を使うと、ぶれが減ります。
④ 測定中は他のアプリを閉じる
ブラウザやチャットアプリはメモリを消費します。
特にメモリが不足気味の環境では、これだけで結果が変わります。
何を測るか:3つの指標
| 指標 | 測り方 | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 書き出し時間 | レンダーキューに表示される経過時間 | 総合的な処理性能 |
| RAMプレビューの秒数 | 止まるまでの再生秒数 | メモリが足りているか |
| プレビューの戻り時間 | 一度見たフレームの再生開始までの時間 | キャッシュ用ストレージの速さ |
意外と見落とされるのが2つ目です。
書き出しは夜間に回せますが、プレビューが止まると作業そのものが止まります。
日中の作業効率に直結するのは、むしろRAMプレビューの秒数です。
ボトルネックを切り分ける手順
測った結果が遅かったとき、原因を特定する順番です。
手順1:メモリが足りているか確認する
レンダリング中に、Windowsならタスクマネージャー、macOSならアクティビティモニタでメモリ使用量を見ます。
空きメモリが少ない状態に加え、メモリの警告やスワップ、プレビューの挙動を確認します。使用率だけで必要な増設量を決めません。
目安はCPUコア数×4GB+20GBで、計算の根拠はAfter Effectsに必要なPCスペックにまとめました。
8コアなら52GB、16コアなら84GBという値は上の計算式による目安で、AEの必須容量ではありません。必要量はコンポジション、素材、同時処理で変わります。
手順2:マルチフレームレンダリングが効いているか確認する
レンダリング中のCPU使用率を見てください。
CPU使用率だけではマルチフレームレンダリングが働いていないと断定できません。設定、レンダー中のフレーム数、非対応エフェクトの警告と、同じ条件での所要時間を合わせて見ます。
設定はWindowsなら「編集」→「環境設定」→「メモリとパフォーマンス」、macOSなら「After Effects」→「設定」→「メモリとパフォーマンス」にあります。
ここが有効なのにコアが動かない場合は、次の原因が考えられます。
- メモリ不足:利用可能なRAMとコンポジションの必要量によって同時に扱えるフレーム数が変わります。
- 非対応プラグイン:1つでも入っていると、そのコンポで無効になることがあります
- 処理の性質:エクスプレッションの評価など、並列化されない処理もあります
プラグインごとの傾向はプラグイン別・要求スペックで解説しています。
手順3:ストレージが足を引っ張っていないか確認する
プレビューの戻りが遅い場合、ディスクキャッシュの読み書きが原因のことがあります。
キャッシュの保存先が、OSと同じドライブになっていないか確認してください。
設定は「編集」→「環境設定」→「メディア&ディスクキャッシュ」から変更できます。
Adobeは高速なキャッシュ用ストレージを推奨しています。ただし、別SSDなら必ず速くなるとは限りません。空き容量や読み書きの負荷を測り、保存先だけを変えた比較で判断します。
手順4:GPUが使われているか確認する
GPU依存型のプラグインを使っているのにGPU使用率が上がらない場合、設定を確認してください。
ただしAfter EffectsでGPUが効く場面は限られます。
一般的な合成作業でGPU使用率が低いのは、正常な状態です。
記録用のテンプレート
測った結果は、次の項目とセットで残しておくと後で比較できます。
| 記録する項目 | 例 |
|---|---|
| 測定日 | 2026年9月3日 |
| CPU / メモリ / GPU | Ryzen 7 5700X / 64GB / RTX 5070 |
| キャッシュの保存先 | 別ドライブ(NVMe SSD 2TB) |
| プロジェクト名と尺 | 案件A オープニング/15秒 |
| 解像度 | 1920×1080 |
| 使用プラグイン | (あれば記載) |
| 書き出し時間 | 3回測って中央値 |
| RAMプレビュー秒数 | 止まるまでの秒数 |
| 変更点 | メモリを32GB→64GBに増設 |
「変更点」の欄が重要です。
何を変えたときに何秒縮んだかが残っていれば、次の投資判断の材料になります。
測った結果、遅かったときの改善順
- メモリの警告やスワップがあるなら、プレビュー解像度と同時処理を下げて原因を確認し、必要量を検討します。
- 読み書きが詰まっているなら、空き容量と保存先の負荷を確認します。保存先だけを変えて改善するか比較します。
- 非対応プラグインを見直す。
代替があるなら、マルチフレームレンダリング対応のものへ - CPUやGPUの変更は、対象の処理で不足している根拠を確認してから検討します。
最初にCPUやGPUを疑う人が多いのですが、実際はメモリとストレージで解決することが少なくありません。
固定の購入順を決めるより、自分のプロジェクトで遅い処理を確認するほうが判断しやすくなります。
メモリを増やす
キャッシュ用のSSDを足す
周辺機器の優先順位は作業が速くなる周辺機器にまとめています。
レンダリングや書き出しを速くする方法は、ほかにも書いています。




まとめ
レンダリング時間は、プロジェクトの中身で大きく変わります。
他人の数字ではなく、自分の環境で測るのが確実です。
- 初回処理と繰り返し処理を分け、比較する条件のキャッシュ状態をそろえる
- 変える条件は1つだけ
- 書き出し時間だけでなくRAMプレビューの秒数も測る
- 改善対象は測った原因から選び、変更を1つずつ試す
買い替えを検討する段階なら、After Effects向けPC比較で予算とメモリから絞り込めます。
※本記事に掲載した価格・仕様は2026年9月3日時点の調査に基づきます。
最終調査日:2026年9月3日。
価格は変動するため、購入前に販売ページで最新の情報をご確認ください。
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制作PCの構成を比較するガイド
PCを見積もる際は、メモリと保存先、GPUを一括りにせず、普段の制作で不足する条件を整理します。
運営メディア「デザノマ」の制作PCの構成を比較するガイドで確認できます。
