After Effects用のPCを選ぶとき、カタログの「推奨スペック」だけを見ると失敗します。
ゲーム用途や写真編集とは、効くパーツがまったく違うからです。
結論を先に書きます。
After Effectsで効くのは、メモリ容量・CPUのコア数・キャッシュ用の高速ストレージの3つです。
GPUは、多くの人が思っているほど効きません。
Adobe公式の必要システム構成
まず基準として、公式が示している要件を確認します。
| 項目 | 最小構成 | 推奨 |
|---|---|---|
| メモリ | 16GB | 32GB以上(高度な作業は64GB以上) |
| CPU | Intel 第6世代以降 / Ryzen 1000シリーズ以降 | Core i7以上 |
| GPU(VRAM) | 2GB | HDで4GB / 4K以上で6GB以上 |
| ストレージ | 空き容量15GB程度 | SSD必須。キャッシュ用に別ドライブ |
ただしこの表は「動く」ための最低ラインです。
実際に快適かどうかは、次の3つで決まります。
① メモリ = 最重要。計算式で必要量が出せる
After EffectsはRAMプレビューという仕組みで、計算済みのフレームをメモリに溜めて再生します。
つまりメモリ容量が、そのまま一度にプレビューできる秒数になります。
メモリが足りないと、数秒再生しただけで止まります。
必要メモリの目安:コア数 × 4GB + 20GB
After Effects 2022以降はマルチフレームレンダリング(MFR)が入り、複数のフレームを同時に計算するようになりました。
このときCPUコア1つにつき約4GBのメモリを使います。
そこにOSとAE本体の分として20GBを足すのが、実用的な目安です。
| CPUのコア数 | 計算 | 必要メモリの目安 | 現実的な構成 |
|---|---|---|---|
| 8コア | 8×4+20 | 52GB | 64GB |
| 12コア | 12×4+20 | 68GB | 64〜96GB |
| 16コア | 16×4+20 | 84GB | 96〜128GB |
| 24コア | 24×4+20 | 116GB | 128GB |
ここが落とし穴です。
コア数の多いCPUを積んでもメモリが足りないと、MFRが本来の性能を出せません。
「16コアCPU+メモリ32GB」という構成は、CPUの性能を活かしきれない組み合わせになります。
予算に限りがあるなら、CPUを一段落としてメモリを増やすほうが体感は良くなります。
② CPU = 「シングルスレッド重視」はもう古い
以前のAfter Effectsは並列処理が苦手で、「コア数よりクロック」と言われていました。
2022年のMFR導入で、この前提は変わりました。
いまはコア数も効きます。
ただし、コア数を増やせば増やすほど速くなるわけではありません。
先ほどの計算式のとおりメモリが伴わないと頭打ちになります。
また、一部のエフェクトやエクスプレッションの評価は今も並列化されません。
実用的な目安は8〜16コアです。
そのうえでクロックが高いものを選ぶ、という順番が失敗しにくいです。
③ ストレージ = キャッシュ専用ドライブが効く
After Effectsはディスクキャッシュに計算結果を書き出し、次回以降の再計算を省きます。
ここが遅いと、せっかくのキャッシュが足を引っ張ります。
Adobeも「ディスクキャッシュには別の高速ドライブを使う」ことを推奨しています。
理想は2基構成です。
- 1基目:OSとAfter Effects本体
- 2基目:素材とディスクキャッシュ(NVMe SSD)
キャッシュ用のドライブは、容量よりも読み書きの速さが効きます。
PCIe Gen4以上のNVMe SSDを1TB以上割り当てると、プレビューの戻りが目に見えて変わります。
GPUは、思ったほど効かない
ゲーミングPCの感覚で「まずGPU」と考えると、予算配分を間違えます。
After EffectsでGPUが効くのは、限られた場面だけです。
| GPUが効く | GPUが効かない |
|---|---|
| 3Dレンダラー(Advanced 3D) | 一般的なレイヤー合成 |
| ブラー系・Lumetriカラーなど一部エフェクト | エクスプレッションの評価 |
| ロトブラシなどのAI機能 | 多くのサードパーティ製プラグイン |
| 書き出し時のエンコード | RAMプレビューの生成そのもの |
VRAM 8GBクラスがあれば、多くの作業では十分です。
RTX 5070(VRAM 12GB)やRTX 5060 Ti(16GB)あたりが現実的な着地点になります。
最上位のGPUに予算を割くくらいなら、メモリを64GBから96GBに増やすほうが体感は良くなります。
予算配分の考え方
同じ40万円を使うなら、この2つでは体感がはっきり違います。
| 配分A(GPU重視) | 配分B(メモリ重視・推奨) | |
|---|---|---|
| CPU | 8コア | 8〜12コア |
| メモリ | 32GB | 64GB |
| GPU | RTX 5080(16GB) | RTX 5070(12GB) |
| ストレージ | 1TB×1 | 1TB+キャッシュ用2TB |
| 結果 | プレビューが数秒で止まる | 長く再生できて作業が途切れない |
After Effectsの作業時間の多くは、プレビューの確認に使われます。
そこが快適かどうかが、そのまま制作のテンポになります。
まとめ:見るべき順番
- メモリ:コア数×4GB+20GB。
最低でも32GB、できれば64GB以上 - CPU:8〜16コア。
多すぎてもメモリが伴わなければ活きません - ストレージ:キャッシュ用に別のNVMe SSDを用意する
- GPU:VRAM 8GB以上あれば十分。
ここに予算を寄せすぎない
この順番で選べば、大きく外すことはありません。
※本記事に掲載した価格・仕様は2026年9月3日時点の調査に基づきます。
最終調査日:2026年9月3日。
価格は変動するため、購入前に販売ページで最新の情報をご確認ください。
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計算式を満たす3台
上の「コア数 × 4GB + 20GB」を実際の製品に当てはめてみます。
8コアのCPUなら52GBなので、64GB搭載機が基準になります。
① 基準を満たす1台:RTX 5070(8コア / 64GB)
Ryzen 7 5700Xの8コアに対してメモリ64GBなので、計算式の52GBを満たします。
この記事の条件をそのまま満たす、最も価格の低い構成です。
② 国内サポートを重視するなら:mouse G TUNE DG
同じく8コア+64GBの構成で、計算式を満たします。
価格は上がりますが、国内メーカーのサポートを受けられます。
③ 入門として始めるなら:RTX 5060(8コア / 32GB)
この構成は計算式を満たしません。
8コアなら52GB必要なところ、メモリは32GBです。
フルHDでエフェクトが軽いうちは動きますが、RAMプレビューできる尺が短くなります。
購入前に、メモリを増設できるか確認してください。
逆に避けたいのが、コア数の多いCPUにメモリ32GBという組み合わせです。
24コアのCPUなら計算式は116GBになるため、最も不足が大きい構成になります。
候補をもっと見比べたい場合はAfter Effects向けPC比較で、スペックを絞り込みながら選べます。
制作環境全体の構成を比較する
After Effectsの利用バージョンと普段のコンポジションを基準に、増設・買い替えの費用と対応条件を照合できます。
運営メディア「デザノマ」の制作PCの構成・増設の選び方で確認できます。
