作業を始める前に、入稿形式、仕上がり寸法、塗り足し量、トンボの要否、色とフォントの条件を入稿ガイドから控えてください。以下の3mm・CMYKは一般的な説明例であり、入稿先の指定を置き換えるものではありません。
印刷所に出すデータは、画面で見てきれいなだけでは足りません。
紙を切ったときに白いふちが出ない、色が変わらない、文字が化けない、といった条件をそろえる必要があります。
この記事では、Illustratorで入稿データを作るときに確かめることを、作業の順にまとめました。
- 裁ち落とし:入稿先の指定量まで背景や写真を伸ばす(3mm指定の場合は外側3mm)
- 色:CMYKなど、入稿先が指定する色の条件を確認する
- 画像:リンク切れがなく、解像度が足りている
- 文字:アウトライン化するか、フォントを埋め込んだPDFにする
- 書き出し:印刷所の指定のPDF/Xで書き出す
いちばん大事なのは、入稿先の印刷所の「入稿ガイド」です。
この記事の手順と入稿ガイドが食い違うときは、入稿ガイドに合わせてください。
Adobe公式ヘルプ(2026年9月29日に確認)の説明をもとに、手順をまとめています。
2026年10月17日に、Illustrator 2026(30.8.2)とWindows 11 Proで、名刺サイズ(91×55mm)の練習用ファイルを使い、2の背景の延長、3のカラーモード、4のリンク情報、5のフォントとアウトライン、7のPDF/X-4での書き出しを画面で確かめました。
書き出したPDFは、仕上がり(TrimBox)と裁ち落とし(BleedBox)の大きさを測っています。
印刷会社での受け付けや実際の印刷、6のオーバープリントは確かめていません。
入稿前のチェック表
| 確認すること | どこで確かめるか | 詳しい手順 |
|---|---|---|
| 仕上がりの大きさとアートボードが合っている | アートボードツール・ドキュメント設定 | この記事の1 |
| 指定された裁ち落としまで背景が伸びている | 裁ち落とし設定と、背景・写真が指定範囲まで届くかを文書と出力PDFで確認 | この記事の2 |
| トンボが付いている(必要な場合) | PDF保存時の「トンボと裁ち落とし」と出力PDF。AIへ線を作る指定ならトリムマークを作成 | トンボの作り方 |
| カラーモードが入稿先の指定に合っている | 「ファイル」→「ドキュメントのカラーモード」 | この記事の3 |
| リンク切れ・画像の解像度 | リンクパネル | この記事の4 |
| 文字のフォント | 「書式」→「フォントの検索と置換」 | この記事の5 |
| プロセスの白に意図しないオーバープリントがない(特色白は指定を確認) | 「表示」→「オーバープリントプレビュー」 | オーバープリントの記事 |
| PDF/Xで書き出す | 「ファイル」→「別名で保存」→ Adobe PDF | PDF/Xの記事 |
1. 仕上がりの大きさを決める
アートボードは、仕上がり(紙を切ったあと)の大きさにします。
名刺なら 91×55mm、A4なら 210×297mm のように、入稿ガイドの仕上がりの寸法に合わせます。
文字や大事な図は、切れても困らないよう、仕上がりの線から内側に余白をとって置きます。
2. 指定された裁ち落とし(塗り足し)を付ける
紙を切るときは、少しずれることがあります。
背景の色や写真を仕上がりのぴったりで止めると、ずれたときに白いふちが出るので、外側まで伸ばしておきます。
塗り足し量は印刷会社と製品の指定を確認します。トンボの種類を選んだことだけで、必要な量を設定できたとは判断しません。
入稿先が3mmを指定している場合は、「ファイル」→「ドキュメント設定」の「裁ち落とし」に3mmを設定し、その線まで背景を伸ばします。上下左右で指定が異なる場合はそれぞれ合わせます。裁ち落としの数値を設定するだけでは背景や写真は延長されません。
トンボの作り方と日本式トンボへの切り替えは、Illustratorのトンボの作り方で紹介しています。
背景を裁ち落とし線まで伸ばした結果(2026年10月17日に確認)
練習用に、仕上がり91×55mm・CMYK・裁ち落とし天地左右3mmの文書を用意し、背景の長方形はアートボードと同じ91×55mmにしました。
文書の準備と、画像1枚・文字1行の配置はスクリプトで行い、ここからの操作は画面で行いました。
選択ツールで背景を選ぶと、[プロパティ]パネルの[変形]にW 91 mm・H 55 mmと出ました。
基準点は中央、縦横比の固定はオフのまま、Wに「97 mm」、Hに「61 mm」を入力してそれぞれ確定しました。
97mmと61mmは、仕上がりの寸法に、裁ち落とし3mmの両側分(6mm)を足した値です。
背景は上下左右に3mmずつ広がり、赤い裁ち落とし線まで塗られました。

スクリプトで読み取ると、背景はアートボードの各辺より8.504pt(3mm)外側まで広がっていました。
スマートガイドでのドラッグなど、ほかの伸ばし方は試していません。
3. 指定された色の条件に合わせる
Illustratorのドキュメントは、RGBかCMYKのどちらか1つのカラーモードで作られます。
CMYKでの入稿を指定されている場合は、「ファイル」→「ドキュメントのカラーモード」→「CMYK カラー」を確認します。RGBを保持できるPDF/X-4のワークフローもあるため、印刷という理由だけで一律に変換せず、入稿先の色変換と出力プロファイルの指定に合わせます。
練習用の文書で「ファイル」→「ドキュメントのカラーモード」を開くと、「CMYK カラー」にチェックが付いていました(2026年10月17日に確認)。

同じ文書に配置したPNG画像は、リンク情報のカラースペースがRGBのままでした。
ドキュメントのカラーモードがCMYKでも、リンクした画像の色の形式は画像ファイルのままなので、画像は別に確かめます。
RGBからCMYKへ変換すると見た目が変わることがあります。変換が必要な場合は使用するプロファイルを確認し、元データのコピーで変換前後を比較します。
グレースケールで作ったオブジェクトをCMYKにしたいときは、選んで「編集」→「カラーを編集」→「CMYKに変換」を使います。
4. 画像を確かめる
- リンクパネルで、リンク切れ(警告の付いた画像)がないか
- 画像の解像度が、入稿ガイドの指定を満たしているか
- 画像をリンクのまま出すか、埋め込むか(入稿ガイドに従う)
画像のダウンサンプルはPDFの圧縮設定で決まります。解像度の設定値だけでなく、処理対象になる画像のしきい値も確認してください。
元の画像がそれより粗いと、書き出しても細かくはならないので、配置した大きさで足りるかを先に確かめます。
練習用の文書に、600×400pxのPNGを幅50mmでリンク配置しました(配置はスクリプトで行いました)。
「ウィンドウ」→「リンク」で[リンク]パネルを開くと、一覧に警告の印は出ていませんでした(2026年10月17日に確認)。
画像を選んでパネル左下の三角を押すと、リンク情報が開き、PPIは305、拡大・縮小は98.425%と出ました。

600pxを50mm(約1.97インチ)に並べるとおよそ305ppiになるので、配置した大きさでの解像度が表示されています。
リンク切れの画像を含む文書では試していません。
リンク画像をまとめて渡すときは、Illustratorの「パッケージ」でリンク画像とフォントを集める方法で紹介しています。
5. 文字を確かめる
相手のパソコンに同じフォントがないと、文字が別のフォントに置き換わってしまいます。
- 文字をアウトライン化する(「書式」→「アウトラインを作成」。元のデータは別に残す)
- フォントを埋め込んだPDF(PDF/X)で入稿する
パッケージですべての日本語フォントが揃うとは限りません。コピー対象・入手元・使用許諾と、受け手のフォント環境を確認します。
練習用の文書で「書式」→「フォントの検索と置換」を開くと、ドキュメントフォントは「游ゴシック Regular」の1つだけで、環境にないフォントは0でした(2026年10月17日に確認)。

このダイアログを開くと、文書の中の文字が選ばれ、ツールが文字ツールに切り替わりました。
7の手順でPDF/X-4として書き出したPDFには、游ゴシック(YuGothic-Regular)が、使った文字だけのサブセットとして埋め込まれていました。
書き出した後の文書で「選択」→「すべてを選択」→「書式」→「アウトラインを作成」を行うと、文字は図形になり、テキストは0件、[フォントの検索と置換]のドキュメントフォントも0になりました。
この文書は保存していないので、元の.aiファイルの文字はそのまま残っています。
6. オーバープリントを確かめる
CMYKの各値が0のプロセスの白はインキを置かないため、オーバープリントによって背景が透ける問題があります。白インキとして使う特色の白は別の条件です。画面で白く見えるものを一律に同じ設定へ変えず、色の種類と入稿先の指定を確認します。
「表示」→「オーバープリントプレビュー」で、刷り上がりに近い見た目を確かめます。
詳しくは、Illustratorのオーバープリントの確認と設定で紹介しています。
7. PDF/Xで書き出す
最後に、入稿ガイドで指定された形式・規格・設定で保存します。PDF/X-1aやPDF/X-4の指定がある場合は、該当するプリセットを起点に各設定を確認します。
書き出したPDFは、Acrobat などで開いて、見た目が変わっていないかを必ず確かめます。
違いと手順は、IllustratorのPDF/X-1aとPDF/X-4の違いで紹介しています。
PDF/X-4のプリセットでは裁ち落としが0mmだった(2026年10月17日に確認)
背景を97×61mmに伸ばした練習用の文書を、「ファイル」→「別名で保存」でファイルの種類を「Adobe PDF (*.PDF)」にして保存しました。
[Adobe PDF を保存]の画面が開いた時点のプリセットは[Illustrator 初期設定]で、[トンボと裁ち落とし]の[ドキュメントの裁ち落とし設定を使用]はオンでした。
プリセットを[PDF/X-4:2008 (日本)]に切り替えると、準拠する規格はPDF/X-4:2010、互換性はAcrobat 7 (PDF 1.6)になりました。
このとき[ドキュメントの裁ち落とし設定を使用]はオフに変わり、天地左右の裁ち落としは0 mmでした。

この状態のまま保存したPDFは、MediaBox・TrimBox・BleedBoxがどれも91×55mmで、伸ばした背景の裁ち落とし部分は入っていませんでした。
もう一度[別名で保存]から同じプリセットを選び、[ドキュメントの裁ち落とし設定を使用]をオンにすると、天地左右が3 mmになり、プリセット名の後ろに(変更)と付きました。

[PDF を保存]を押すと、「PDF/X 形式で保存すると、次にドキュメントを開いたときに編集機能の一部が使用できなくなる可能性があります。」という確認が出たので、[OK]で保存しました。
書き出した2つのPDFをファイルとして読み取り、ページの大きさを測った結果です。
| ページの枠 | 裁ち落としの設定がオフ(プリセットのまま) | 裁ち落としの設定がオン |
|---|---|---|
| MediaBox | 91×55mm | 97×61mm |
| TrimBox(仕上がり) | 91×55mm | 91×55mm(各辺3mm内側) |
| BleedBox(裁ち落とし) | 91×55mm | 97×61mm |
オンで書き出したPDFは、TrimBoxが257.953×155.905pt、BleedBoxが274.961×172.913ptで、BleedBoxの四隅まで背景の色が入っていました。
どちらのPDFも、出力インテントはJapan Color 2001 Coated、規格の表記はPDF/X-4でした。
次に[Adobe PDF を保存]を開くと、プリセットの欄は「カスタム」になっていて、直前に変えた設定が残っていました。
PDF/Xのプリセットを選んだ後は、保存する前に[トンボと裁ち落とし]を開いて、裁ち落としの値が入稿ガイドの指定と合っているかを確かめます。
Acrobatでの表示とプリフライトによる規格の検査、トンボを付けて書き出す場合は確かめていません。
自動チェックで省略できない確認
入稿前チェックのJSXは確認の補助です。リンク画像の色、画像解像度、背景が塗り足しまで届くかは別に確認します。スクリプトの検出が0件でも、入稿条件を満たした証明にはなりません。
まとめ
- アートボードは仕上がりの大きさ、背景は指定された塗り足し量まで伸ばす
- 色の条件は入稿先の指定に合わせる
- リンク切れと解像度を確かめる
- 文字はアウトライン化か、フォントを埋め込んだPDFに
- 白のオーバープリントを確かめ、指定のPDF/Xで書き出す
参考:Adobe「Printer’s marks and bleeds」「Convert color modes」「Create Adobe PDF files」(2026年9月29日に確認)。
公式の設定説明と、入稿先の指定を照合する
Adobeのトンボと裁ち落としは、必要な塗り足し量を印刷会社へ確認するよう案内しています。PDF保存時の色変換・出力インテント・圧縮はAdobe PDFオプションを参照してください。2026年10月3日に本文を確認しました。ここで説明した入稿条件の組み合わせを実機で比較した結果や、印刷会社による受理結果ではありません。
よくある質問:Illustratorで入稿データを作る
入稿データを作るとき、いちばん最初に確認することは何ですか?
作業を始める前に、入稿形式、仕上がり寸法、塗り足し量、トンボの要否、色とフォントの条件を、入稿先の印刷所の「入稿ガイド」から控えてください。記事の3mm・CMYKは一般的な説明例で、入稿先の指定を置き換えるものではありません。記事の手順と入稿ガイドが食い違うときは、入稿ガイドに合わせます。
アートボードは、どんな大きさにしますか?
アートボードは、仕上がり(紙を切ったあと)の大きさにします。名刺なら91×55mm、A4なら210×297mmのように、入稿ガイドの仕上がりの寸法に合わせます。文字や大事な図は、切れても困らないよう、仕上がりの線から内側に余白をとって置きます。
裁ち落とし(塗り足し)は、どう設定しますか?
紙を切るときは少しずれることがあり、背景の色や写真を仕上がりのぴったりで止めると、ずれたときに白いふちが出るので、外側まで伸ばしておきます。入稿先が3mmを指定している場合は、「ファイル」→「ドキュメント設定」の「裁ち落とし」に3mmを設定し、その線まで背景を伸ばします。上下左右で指定が異なる場合は、それぞれ合わせます。裁ち落としの数値を設定するだけでは背景や写真は延長されません。塗り足し量は、印刷会社と製品の指定を確認してください。
仕上がり91×55mm・裁ち落とし3mmの練習用ファイルでは、背景を中央基準でW 97mm・H 61mmにすると、裁ち落とし線まで届きました(Illustrator 30.8.2、2026年10月17日に確認)。
印刷なら、必ずCMYKに変換しますか?
必ずしもそうではありません。CMYKでの入稿を指定されている場合は、「ファイル」→「ドキュメントのカラーモード」→「CMYK カラー」を確認します。RGBを保持できるPDF/X-4のワークフローもあるため、印刷という理由だけで一律に変換せず、入稿先の色変換と出力プロファイルの指定に合わせます。RGBからCMYKへ変換すると見た目が変わることがあるため、変換が必要な場合は使用するプロファイルを確認し、元データのコピーで変換前後を比較します。
画像は、何を確かめればよいですか?
リンクパネルで、リンク切れ(警告の付いた画像)がないか、画像の解像度が入稿ガイドの指定を満たしているか、画像をリンクのまま出すか埋め込むか(入稿ガイドに従う)を確かめます。元の画像が粗いと、書き出しても細かくはならないので、配置した大きさで足りるかを先に確かめてください。画像のダウンサンプルはPDFの圧縮設定で決まります。リンク画像をまとめて渡すときは、Illustratorの「パッケージ」でリンク画像とフォントを集める方法があります。
文字は、アウトライン化したほうがよいですか?
相手のパソコンに同じフォントがないと、文字が別のフォントに置き換わってしまいます。対策は、文字をアウトライン化する(「書式」→「アウトラインを作成」、元のデータは別に残す)か、フォントを埋め込んだPDF(PDF/X)で入稿することです。パッケージですべての日本語フォントが揃うとは限らないため、コピー対象・入手元・使用許諾と、受け手のフォント環境も確認してください。
白のオーバープリントは、なぜ問題になりますか?
CMYKの各値が0のプロセスの白は、インキを置かないため、オーバープリントによって背景が透ける問題があります。白インキとして使う特色の白は別の条件です。画面で白く見えるものを一律に同じ設定へ変えず、色の種類と入稿先の指定を確認します。「表示」→「オーバープリントプレビュー」で、刷り上がりに近い見た目を確かめます。
PDF/Xで書き出したあとは、何をしますか? 記事のチェックだけで入稿して大丈夫ですか?
入稿ガイドで指定された形式・規格・設定で保存します。PDF/X-1aやPDF/X-4の指定がある場合は、該当するプリセットを起点に各設定を確認します。書き出したPDFは、Acrobatなどで開いて、見た目が変わっていないかを必ず確かめます。入稿前チェックのJSXは確認の補助で、検出が0件でも、入稿条件を満たした証明にはなりません。記事の内容は、Adobe公式ヘルプ(2026年9月29日に確認)にもとづき、入稿条件の組み合わせを実機で比較した結果や、印刷会社による受理結果ではありません。最新はAdobe公式のヘルプと、入稿先の入稿ガイドで確認してください。
Illustrator 30.8.2で[PDF/X-4:2008 (日本)]を選ぶと、[ドキュメントの裁ち落とし設定を使用]がオフ・裁ち落とし0 mmになり、そのまま保存したPDFには裁ち落としが入りませんでした(2026年10月17日に確認)。
裁ち落としの指定がある入稿では、保存する前に[トンボと裁ち落とし]で値を確かめてください。
