印刷所に入稿するPDFは、ふつうのPDFではなく、印刷向けの決まり(PDF/X)に沿って書き出すよう求められることがあります。
Illustratorでよく使うのは、PDF/X-1a と PDF/X-4 の2つです。
- いちばんの違い:PDF/X-1a は透明を分割・統合する、PDF/X-4 は透明をそのまま残す
- 色:PDF/X-1a は CMYK と特色だけ、PDF/X-4 はカラーマネジメントに対応
- Adobeは、印刷向けには PDF/X-4:2008 を最適な形式として勧めている
- 実際に選ぶのは、入稿先の印刷所の指定
この記事は、Adobe公式ヘルプ「Create Adobe PDF files」「Adobe PDF options」(2026年9月29日に確認)にもとづいています。
2026年10月12日に、Illustratorの日本語表示で、PDF保存の画面を確認しました。
2026年10月16日に、Windows 11 Pro(10.0.26200)のAdobe Illustrator 30.8.2で、同じ半透明の図形をPDF/X-1aとPDF/X-4で保存し、透明の扱いの違いを確かめました。
実際の印刷と、PDF/Xの規格に合っているかの検査は確かめていません。
PDF/X-1aとPDF/X-4の違い
| PDF/X-1a | PDF/X-4 | |
|---|---|---|
| 向いている流れ | CMYKで作って刷る | カラーマネジメントを使う流れ |
| 透明 | 分割・統合する(高解像度の設定で) | 分割せずに残す |
| 色 | CMYK・特色・その両方 | RGBやICCプロファイルも扱える |
| 確認する設定 | 規格の版と「互換性」は、選択したプリセット・入稿先の指定で確認する | |
| フォント | すべて埋め込む(使っている文字だけ) | 同じ |
| 画像 | 圧縮・ダウンサンプルはプリセットとしきい値で決まる | 同じ |
PDF/X-1aでは、使用するフォントの埋め込みやCMYK・特色の扱いなど、印刷用データの条件を満たす必要があります。トンボの要否と塗り足し量は、入稿先の指定で別に確認します。
どちらも、どの印刷の条件向けに作ったかを表す情報(出力インテント)が必要です。
同じ図形をPDF/X-1aとPDF/X-4で保存して比べた結果(2026年10月16日)
Windows 11 Pro(10.0.26200)のAdobe Illustrator 30.8.2(日本語表示)で、透明の扱いがどう変わるかを確かめました。
600×400ポイントのCMYKのドキュメントに、シアン100%の長方形と、不透明度50%のマゼンタ100%の円を重ねて置きました。
このドキュメントと図形はスクリプトで用意したもので、作る操作は確認に含めていません。
同じファイルを、「[PDF/X-1a:2001(日本)]」と「[PDF/X-4:2008(日本)]」のプリセットを指定して、別々のPDFに保存しました。
保存はスクリプトから行い、「Illustratorの編集機能を保持」はオフにしています。
「Adobe PDFを保存」の画面で設定を選ぶ操作は、確認に含めていません。
保存した2つのPDFをIllustratorで開き直し、同じ倍率で表示しました。
重なった部分や円を選ぶ操作もスクリプトで行い、そのときのプロパティパネルの表示を撮影しました。
PDF/X-1aで保存したPDFでは、円と長方形が重なった部分が別のパスに分かれ、不透明度は100%になっていました。

PDF/X-4で保存したPDFでは、円全体をまとめたグループに、不透明度50%が残っていました。

| 項目 | PDF/X-1a:2001(日本) | PDF/X-4:2008(日本) |
|---|---|---|
| PDFのバージョン | 1.3 | 1.6 |
| ページ数と大きさ | 1ページ・600×400pt | 1ページ・600×400pt |
| PDFの中の不透明度の指定 | 100%だけ | 50%の指定が残る |
| 開き直したときの重なった部分 | 不透明度100%の別のパス | 円全体のグループが不透明度50% |
PDFのバージョン、ページの大きさ、PDFの中の不透明度の指定は、保存したPDFを別のツールで読み取って確かめました。
2つのPDFを画像に変換して見比べると、図形の欠けはありませんでしたが、重なった部分の色には差がありました。
印刷したときの色が同じになるかは、確かめていません。
スクリプトの既定の設定のまま保存した最初のPDFは、Illustratorで開き直すと元の編集用のデータが読み込まれたため、比較には使っていません。
実際の印刷、印刷会社での受け付け、PDF/Xの規格にすべて合っているかの検査は確かめていません。
文字、特色、配置した画像、効果、RGBのデータを含む場合の結果も、今回の確認には含めていません。
どちらを選ぶか
- 印刷所の入稿ガイドに指定があれば、必ずそれに合わせる
- 透明を保持するワークフローではPDF/X-4が候補。ただし、入稿先が受け付けるかを先に確認する
- PDF/X-1aの指定がある場合は、透明を分割・統合した結果を確認する
PDF/X-1a は透明を分割・統合するので、透明の重なりの部分に細い線が見えたり、文字が画像になったりすることがあります。
書き出したあとは、Acrobat などで開いて、見た目が変わっていないかを確かめます。
あなたはどっち?入稿先と制作環境から選ぶ判定フロー
次の順で確認すると、PDF/X-1aとPDF/X-4のどちらにするかを決めやすくなります。
- 印刷所の入稿ガイドに指定がある:必ずそれに合わせます。
- 指定がPDF/X-1a:透明が分割・統合されます。書き出したあとに、Acrobatなどで開いて、透明の重なり部分に細い線が出たり、文字が画像になったりしていないかを確かめます。
- 指定がPDF/X-4:透明を分割せずに残せます。RGBやICCプロファイルも扱えます。
- 指定がなく、透明を保持するワークフロー:PDF/X-4が候補です。ただし、入稿先が受け付けるかを先に確認します。Adobeは、印刷向けにはPDF/X-4:2008を最適な形式として勧めています。
- CMYKで作って刷る流れ:PDF/X-1aが向いています。色はCMYKと特色だけです。
どちらを選んでも、どの印刷の条件向けに作ったかを表す情報(出力インテント)が必要です。
書き出す手順
- 「ファイル」→「別名で保存」を選び、ファイルの種類を「Adobe PDF」にする
- 「Adobe PDF を保存」の画面で、プリセットから PDF/X-1a か PDF/X-4 を選ぶ(または上の「準拠する規格」で選ぶ)
- 左の「トンボと裁ち落とし」で、トンボの種類と裁ち落とし(ドキュメントの設定を使うなど)を入稿先の指定に合わせる
- 左の「出力」で、PDF/X の出力インテント(印刷の条件)を選ぶ
- 「PDF を保存」を押す
設定を1つでも変えると、プリセットの名前は「カスタム」に変わります。
よく使う組み合わせは「プリセットを保存」で登録しておくと、次から選ぶだけで済みます。
編集機能の保持と納品用PDFを分ける
オンにすると、PDFの中にIllustratorのデータが丸ごと入り、あとでIllustratorで開いて直せます。
そのぶん圧縮が効きにくくなり、ファイルが大きくなります。
元の編集用AIを別に残し、納品用PDFの編集機能の保持は入稿先の指定に合わせます。容量を抑えたい場合はオフが候補ですが、ファイルサイズの差は実際の出力で確認します。
2026年10月12日に撮影した、Illustratorの「Adobe PDFを保存」の画面です。
プリセットで「[PDF/X-1a:2001(日本)]」を選ぶと、準拠する規格はPDF/X-1a:2001、互換性はAcrobat 4(PDF 1.3)になりました。

「[PDF/X-4:2008(日本)]」を選ぶと、準拠する規格はPDF/X-4:2010、互換性はAcrobat 7(PDF 1.6)と表示されました。

ほかのプリセットとの違い
| プリセット | PDF/Xに準拠 | 使いどころ |
|---|---|---|
| PDF/X-1a・PDF/X-3・PDF/X-4 | する | 入稿 |
| プレス品質 | しない | 高品質な印刷向けだが規格には沿わない |
| 高品質印刷 | しない | 家庭用・事務用のプリンターや校正 |
| 最小ファイルサイズ | しない | Webやメールで見せる(色はsRGBに変わる) |
PDF/X の書き出しでは、パスワードなどのセキュリティの設定は使えません。
規格・プリセット・入稿先の指定を分けて確認する
PDF/Xの規格名だけで画像の解像度や塗り足し量が一律に決まるわけではありません。「圧縮」のダウンサンプル値と対象画像のしきい値、「トンボと裁ち落とし」、「出力」の色変換と出力インテントを確認します。印刷会社がjoboptionsファイルを配布している場合は、その用途と対応版も確認してください。
書き出したPDFは、ページ寸法・塗り足し・文字・リンク画像の見た目を確認します。Acrobat Pro等で規格を確認した結果と、印刷会社が受理した結果は別の確認です。元の編集用AIは別に保持します。
参照:Adobe PDFオプション、Adobe PDFの作成(2026年10月3日確認)。
実機での出力の比較は、2026年10月16日に透明の扱いだけを確かめました(「PDF/X-1aとPDF/X-4の違い」の中の比較)。
画像の解像度、塗り足し、出力インテントの違いは、実際の出力で比べていません。
押さえておきたい最新仕様と注意点
2026年10月12日の、Illustratorの日本語表示の画面で確認した点です。
- プリセット名は「[PDF/X-1a:2001(日本)]」「[PDF/X-4:2008(日本)]」のように表示される
- PDF/X-4のプリセットでは、「準拠する規格」の欄がPDF/X-4:2010と表示された
- PDF/X-1aでは、「上位レベルのレイヤーからAcrobatレイヤーを作成」が選べなかった
- どちらも「Illustratorの編集機能を保持」は選べなかった
プリセットの名前や選べる項目は、バージョンで変わることがあります。
入稿先の指定を、最優先にしてください。
よくある質問:入稿用PDFで迷ったときのチェックリスト
PDF/X-1aとPDF/X-4のいちばんの違いは何ですか?
PDF/X-1aは透明を分割・統合し、PDF/X-4は透明をそのまま残します。色は、PDF/X-1aがCMYKと特色だけ、PDF/X-4はカラーマネジメントに対応しています。
印刷所の指定がないときは、どちらを選びますか?
透明を保持するワークフローならPDF/X-4が候補です。ただし、入稿先が受け付けるかを先に確認してください。実際に選ぶのは、入稿先の印刷所の指定です。
トンボや塗り足しは、PDF/Xの設定で決まりますか?
決まりません。トンボの要否と塗り足し量は、入稿先の指定で別に確認します。書き出し画面の「トンボと裁ち落とし」で、入稿先の指定に合わせます。
「編集機能を保持」はオンにしたほうがよいですか?
オンにすると、PDFの中にIllustratorのデータが丸ごと入り、あとでIllustratorで開いて直せますが、圧縮が効きにくくなり、ファイルが大きくなります。元の編集用AIを別に残し、納品用PDFは入稿先の指定に合わせます。
設定を変えたら、プリセットの名前が「カスタム」になりました。
設定を1つでも変えると、プリセットの名前は「カスタム」に変わります。よく使う組み合わせは、「プリセットを保存」で登録しておくと、次から選ぶだけで済みます。
「プレス品質」はPDF/Xの代わりに使えますか?
使えません。「プレス品質」は高品質な印刷向けですが、PDF/Xには準拠しません。入稿でPDF/Xの指定がある場合は、PDF/X-1a・PDF/X-3・PDF/X-4のプリセットを使います。
まとめ
- PDF/X-1a は透明を分割・統合し、CMYKと特色だけで表す
- PDF/X-4 は透明を残し、カラーマネジメントに対応する
- Adobeは PDF/X-4:2008 を勧めているが、選ぶのは入稿先の指定
- 書き出したら Acrobat などで開いて、見た目の変化を確かめる
参考:Adobe「Create Adobe PDF files」「Adobe PDF options」(2026年9月29日に確認)。
書き出したPDFを、Illustratorで開いた画面です。
半透明の円と青い四角が、そのまま表示されていました。

書き出しの前後に確認すること
規格を選ぶ前に入稿形式・仕上がり寸法・塗り足し・色・文字の確認表へ条件を控えます。保存後はオーバープリントの確認とページ範囲・フォント・画像を照合してください。
フォルダー内AIのPDF一括変換JSXを使う場合も、プリセットの名前だけでPDF/X準拠を保証しません。記事内の3件・4ページの検証は通常プリセットによる限定試験で、PDF/X規格の検証や印刷受理の試験とは分けています。
