NPUは、AIの計算を少ない電力で行うためにCPUに組み込まれた専用の処理装置です。
Copilot+ PCの条件は、40 TOPS以上のNPU・16GBのメモリ・256GBのストレージの3つです。
ただし、2026年11月時点で Ollama と LM Studio は、公式にはNPUで動くとうたっていません。
ローカルLLMを速く動かしたいなら、NPUの数値よりメモリ帯域とGPUのメモリ(VRAM)で選びます。
この記事では、NPUとTOPSの意味、Copilot+ PCの条件と専用機能、チップ別のNPU性能、ローカルLLMでNPUを使う方法を、各社の公式ページをもとにまとめました。
NPUとは|TOPSの意味
NPU(Neural Processing Unit)は、AIの推論でよく使う行列の計算に特化した回路です。
CPUやGPUより少ない電力で同じ計算ができるので、ノートPCでAIの機能を常に動かす用途に向いています。
性能はTOPS(1秒あたり何兆回の演算ができるか)で表します。
各社が出しているTOPSは最適な条件での理論上のピーク値で、IntelとQualcommはINT8(8ビット整数)の値と明記しています。
体感の速さとそのまま結びつくわけではありません。
Copilot+ PCの条件
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| NPU | 40 TOPS以上 |
| メモリ | 16GB(DDR5 または LPDDR5) |
| ストレージ | 256GB(SSD または UFS) |
| 対象のプロセッサ(Microsoftの記載) | AMD Ryzen AI 300/400シリーズ、Intel Core Ultra 200Vシリーズなど、Snapdragon Xシリーズ |
NPUが40 TOPS以上でも、メモリが16GB未満などの構成はCopilot+ PCになりません(Microsoft:Windows 11 の仕様)。
Copilot+ PCで使える主な機能
- リコール(プレビュー):過去に画面に出た内容を探す
- クリックで実行(プレビュー)
- ライブキャプション(リアルタイム字幕)
- ペイントのコクリエーター・生成フィル、フォトのリスタイル イメージ・Image Creator
- フォトのスーパー解像度
- Windows スタジオ エフェクト(カメラの背景ぼかしなど)
名前はMicrosoft:Copilot+ PCの日本語ページの表記に合わせています。
コクリエーター・生成フィル・Image Creator・リスタイル イメージは、インターネットへの接続が必要です。
リコールを有効にするには、空き容量50GB以上、デバイスの暗号化かBitLocker、Windows Hello の生体認証も必要です。
チップ別のNPU性能(メーカー公表値)
| チップ | NPU単体 | 40 TOPS以上か | メモ |
|---|---|---|---|
| Snapdragon X(X Elite・X Plus・X) | 45 TOPS | 満たす | Qualcomm。全SKUで45 |
| Snapdragon X2 Elite・X2 Plus | 80 TOPS(一部85) | 満たす | 2026年の新世代 |
| Intel Core Ultra シリーズ1(Meteor Lake) | 11 TOPS | 満たさない | 例:Core Ultra 9 185H |
| Intel Core Ultra 200V(Lunar Lake) | 40〜48 TOPS | 満たす | Intel:Core Ultra 9 288Vは48 |
| Intel Core Ultra 200H・200S(Arrow Lake) | 13 TOPS | 満たさない | ノートの200Hとデスクトップの200S |
| Intel Core Ultra シリーズ3(Panther Lake) | 46〜50 TOPS | 満たす | 2026年第1四半期から |
| AMD Ryzen 8040・8000G(Hawk Point) | 16 TOPS | 満たさない | 8000Gは型番でNPUの有無が違う |
| AMD Ryzen AI 300(Strix Point) | 50 TOPS | 満たす | AMD:Ryzen AI 9 HX 370 |
| AMD Ryzen AI Max+ 395(Strix Halo) | 50 TOPS | NPUは満たす | 最大メモリ128GB |
| AMD Ryzen AI 400 | 50〜60 TOPS | 満たす | AMDの発表。HX 475が60 |
| Apple M4 | 毎秒38兆回 | (Windowsの条件の対象外) | Apple。精度の明記が無く、INT8の値と単純には比べられない |
Apple M5 の Neural Engine のTOPSは公表されていません。
デスクトップ向けのCore Ultra 200S(13 TOPS)は、高性能でもCopilot+ PCの条件には届きません。
ローカルLLMでNPUは使えるか(2026年11月時点)
| ソフト・道具 | NPU | 公式の記載 |
|---|---|---|
| Ollama | 使わない | 対応はNVIDIA・AMD(ROCm)・Apple(Metal)・Vulkan。NPUの記載は無く、対応の要望は未解決 |
| LM Studio | 公式にNPU対応をうたっていない | 動作要件のページにNPUの記載が無い |
| AMD Ryzen AI Software・Lemonade | 使える(Ryzen AI 300以降) | NPUだけの方式と、NPU+内蔵GPUのハイブリッド。7000・8000シリーズはGPU・CPUだけ |
| Intel OpenVINO GenAI | 使える | NPUを指定して実行。4ビットの対称量子化が条件で、初回の変換に時間がかかる |
| Qualcomm GenieX | 使える(Snapdragon X) | 開発者プレビュー。OpenAI互換のサーバーがある |
| Windows ML・Foundry Local | あれば使う | NPU・GPUがあれば使い、無ければCPUで動く |
つまり、いつも使っているOllamaやLM StudioでNPUが働くわけではありません。
NPUでLLMを動かすには、チップのメーカーが出している道具を使います。
生成の速さを決めるのはメモリ帯域
LLMが文章を作るとき、最初のトークンまでは計算量で、2トークン目からはメモリ帯域で速さが頭打ちになると、Appleの研究者が説明しています(Apple Machine Learning Research)。
AMDも、入力を読み込む段階は計算が重いのでNPUに、文章を作る段階はメモリの読み書きが重いので内蔵GPUに割り振っています(AMDの技術記事)。
このため、ローカルLLMの速さはTOPSより、メモリ帯域とVRAMの容量で比べるのが近道です。
チップごとのメモリ帯域と容量はAI向けCPU・GPU比較表で並べ替えて見られます。
用途別の選び方
| したいこと | 見る数値 | 選び方 |
|---|---|---|
| Copilot+ PCの機能を使いたい | NPU 40 TOPS以上・16GB・256GB | Snapdragon X、Core Ultra 200V・シリーズ3、Ryzen AI 300・400 |
| ローカルLLMを速く動かしたい | メモリ帯域・VRAM | VRAMの多いGPUか、帯域の広いSoC(Ryzen AI Max・Apple) |
| NPUでLLMを試したい | メーカーの道具の対応 | Ryzen AI 300以降+Lemonade、Intel+OpenVINO、Snapdragon+GenieX |
| 電池の持ちを優先して常にAIを動かしたい | NPUの有無 | NPUのあるノートPC |
自分のPCのNPUを確かめる
NPUのあるPCでは、タスクマネージャーの「パフォーマンス」にNPUが表示され、使用率やドライバーの版が見られます(Microsoft Learn)。
プロセスごとのNPUの使用率の列は、2026年11月時点ではWindows Insiderの一部の版で配信中です。
つまずきやすい所と対処
| つまずき | 起きること | 対処 |
|---|---|---|
| TOPSの大きさでローカルLLMの速さを比べる | TOPSが大きいのに生成が遅い | メモリ帯域とVRAMで比べる |
| OllamaでNPUが使われると思う | タスクマネージャーでNPUが0%のまま | NPUで動かすならメーカーの道具を使う |
| Ryzen 8000でNPUを使おうとする | Ryzen AI SoftwareのLLMはNPUに対応していない | Ryzen AI 300以降か、GPUで動かす |
| NPUの値だけ見てCopilot+ PCと思う | メモリ16GB未満だと対象外 | メモリとストレージも確かめる |
| プラットフォーム合計のTOPSで比べる | CPU・GPUの分を足した値で、NPUの値ではない | NPU単体の値で比べる |
よくある質問:AI PCとNPU
NPUが無いとAIは使えませんか?
使えます。
ChatGPTやClaudeのようなクラウドのAIはNPUと関係なく動き、ローカルLLMもGPUやCPUで動きます。
ローカルLLM用にNPUのあるPCを買うべきですか?
速さが目的なら、NPUよりメモリ帯域とVRAMを優先します。
NPUは電池の持ちと、Copilot+ PCの機能のためのものと考えてください。
デスクトップのCore Ultra 200SはCopilot+ PCになりますか?
NPUが13 TOPSなので、40 TOPSの条件に届きません。
まとめ
NPUはAIの計算を少ない電力で行う装置で、Copilot+ PCには40 TOPS以上・16GB・256GBが必要です。
ローカルLLMはOllama・LM StudioではNPUを使わず、速さはメモリ帯域とVRAMで決まります。
NPUでLLMを動かしたいときは、AMD・Intel・Qualcommそれぞれの道具を使ってください。
