入稿の直前に、カラーモードや文字、リンク画像をひとつずつ確かめるのは手間がかかり、見落としも出ます。
このスクリプトは、開いているファイルのよくある問題を数えて、一覧で表示します。
- カラーモードが RGB になっていないか
- アウトライン化していない文字が残っていないか
- リンク切れの画像がないか
- 埋め込み画像に RGB のものがないか
- 白いオブジェクトにオーバープリントが付いていないか
見つけて知らせるだけで、ファイルは何も書き換えません。
スクリプトは、Adobe Illustrator Scripting Guide(Adobeの資料をもとに有志が公開している版、2026年9月29日に確認)のプロパティの説明をもとに作りました。
2026年10月3日にGrayColorの白判定と、リンク情報を読めなかった項目の表示を修正しました。白・黒とリンク確認の分岐は模擬オブジェクトで試験しています。Windows 11 Pro/Illustrator 30.8.2での白・黒2図形の検出結果も後述します。グループや複合パス、リンク状態ごとの実際の検出範囲は、引き続き実機で確認します。
スクリプト
// 入稿前に、よくある問題を一覧にする(何も書き換えない)
function isWhite(c) {
if (c.typename === "CMYKColor") return c.cyan === 0 && c.magenta === 0 && c.yellow === 0 && c.black === 0;
if (c.typename === "RGBColor") return c.red === 255 && c.green === 255 && c.blue === 255;
if (c.typename === "GrayColor") return c.gray === 100;
return false;
}
function main() {
if (app.documents.length === 0) { alert("ファイルを開いてから実行してください"); return; }
var doc = app.activeDocument;
var msgs = [];
if (doc.documentColorSpace === DocumentColorSpace.RGB) msgs.push("カラーモードが RGB です");
if (doc.textFrames.length > 0) msgs.push("アウトライン化していない文字:" + doc.textFrames.length + " 個");
var missing = 0;
var unknownLinks = 0;
for (var i = 0; i < doc.placedItems.length; i++) {
try { if (!doc.placedItems[i].file.exists) missing++; } catch (e) { unknownLinks++; }
}
if (missing > 0) msgs.push("リンク切れの画像:" + missing + " 個");
if (unknownLinks > 0) msgs.push("リンク情報を確認できない項目:" + unknownLinks + " 個(手動で確認)");
var rgbImages = 0;
for (var j = 0; j < doc.rasterItems.length; j++) {
if (doc.rasterItems[j].imageColorSpace === ImageColorSpace.RGB) rgbImages++;
}
if (rgbImages > 0) msgs.push("埋め込みの RGB 画像:" + rgbImages + " 個");
var whiteOp = 0;
for (var k = 0; k < doc.pathItems.length; k++) {
var p = doc.pathItems[k];
if (p.filled && p.fillOverprint && isWhite(p.fillColor)) whiteOp++;
else if (p.stroked && p.strokeOverprint && isWhite(p.strokeColor)) whiteOp++;
}
if (whiteOp > 0) msgs.push("オーバープリントの付いた白:" + whiteOp + " 個");
alert(msgs.length === 0 ? "このスクリプトの対象範囲では検出0件です。入稿条件は別途確認してください" : msgs.join("\n"));
}
main();使い方
- 上のスクリプトを preflight.jsx という名前(BOM付きのUTF-8)で保存する
- 確かめたいファイルを開く
- 「ファイル」→「スクリプト」→「その他のスクリプト」から実行する
何も見つからなければ「このスクリプトの対象範囲では検出0件です。入稿条件は別途確認してください」、見つかれば項目ごとの数が表示されます。
調べていること
| 項目 | 使っているプロパティ |
|---|---|
| カラーモード | doc.documentColorSpace |
| アウトライン化していない文字 | doc.textFrames の数 |
| リンク切れ | placedItems の file が存在するか |
| 埋め込みの RGB 画像 | rasterItems の imageColorSpace |
| 白のオーバープリント | pathItems の fillOverprint・strokeOverprint と色 |
白かどうかは、CMYKならすべて0%、RGBなら255・255・255、GrayColorのgray値なら100で判断します。GrayColorの数値とカラーパネルのK濃度を同じものとして扱わないでください。
特色の白・グラデーションやシンボルなどの検出範囲は、このサンプルでは保証していません。グループ内を含むコレクションの参照範囲も実機未確認です。最後はオーバープリントプレビューで確かめます。
検出された項目が入稿不備かは、指定と照合する
| 表示された項目 | この検出だけでは決まらないこと | 次の確認 |
|---|---|---|
| RGBの文書・画像 | RGBを許容するワークフローか、CMYKへの変換が必要か。 | 入稿先の色条件とPDF/Xの選択を確認する。 |
| アウトライン化していない文字 | フォントを埋め込んだPDFを受け付けるか。 | 文字を残す/アウトライン化する条件と元AIの保管を決める。 |
| リンク切れ・リンク情報取得不能 | 同じ原因ではなく、取得不能を欠落確定へ読み替えない。 | リンクパネルで修復と保存先を確認する。 |
| プロセスの白のオーバープリント | 特色の白・グラデーション・全階層の検出結果は保証しない。 | 白の種類とオーバープリントプレビューを確認する。 |
検出0件は入稿合格の判定ではありません。白のプレビューと出力の考え方はAdobeのオーバープリントの説明、PDFの色・フォント・透明の設定はAdobe PDFオプションを参照してください。掲載コードの検出条件と、印刷先の受け入れ条件を分けて使います。
このスクリプトで分からないこと
- リンクしている画像が RGB かどうか(リンク画像の色は調べていない)
- 画像の解像度が足りているか
- 裁ち落としまで背景が伸びているか
入稿前の確認の全体は、Illustratorで印刷入稿データを作る手順で紹介しています。
白のオーバープリントがなぜ問題になるかは、Illustratorのオーバープリントの確認と設定で紹介しています。
まとめ
- 開いているファイルのRGB・未アウトライン・リンク切れ・RGB画像・白のオーバープリントを一覧にする
- ファイルは書き換えない
- グループ内などの検出範囲は未検証。プレビューでも確かめる
参考:Adobe Illustrator Scripting Guide(Document・PathItem・RasterItem、2026年9月29日に確認)。
リンク切れと確認できない項目の区別
file.existsがfalseの項目をリンク切れとして数えます。fileの参照で例外になった項目は、原因を断定せず「リンク情報を確認できない項目」に分けます。画像の欠落が確定した数と、調べられなかった数を合算しないためです。どちらもリンクパネルで確認してください。
GrayColorの白判定はAdobeのIllustrator JavaScript Scripting Referenceにあるgrayの定義に基づきます。Adobe資料をもとに維持されているGrayColorの参照ページにも同じ範囲が記載されています。特色・グラデーションなどはこの単色判定の対象外です。
白と黒の2図形による実機確認
2026年10月3日、Windows 11 Pro/Illustrator 30.8.2(64-bit)の自作CMYKドキュメントで、GrayColorの白(gray=100)と黒(gray=0)の四角形を1個ずつ用意しました。両方のfillOverprintをtrueにして掲載のチェック処理を実行したところ、結果は「オーバープリントの付いた白:1個」でした。黒はこの件数に含まれませんでした。

別の記録用ハーネスでも、白・黒の型はGrayColor、値は100・0であり、実行後のパス数2と両方のオーバープリント属性trueを確認しました。この処理は今回の2図形の属性を変更していません。リンク切れ、読み取り不能なリンク、階層・複合パス・特色・グラデーション・シンボル、文書全体のファイルハッシュ、Macは実機未確認です。結果が1個でも、そのほかの入稿条件を満たすとは判断しません。
